舞踏「ケチャ」
大勢の半裸の男たちが円陣を組み、皆で「ケチャ、ケチャ、ケチャ」と掛け声を投げかける踊りがあります。
複雑なリズムは次第に激しさを増していき、男たちは半ば忘我状態となって、手や身体を揺り動かしながら絶叫します。
インドネシアのバリ島の舞踏「ケチャ」は、もともと悪霊を追い払う呪術的な性格の強い合唱を意味していました。
それがインドの叙事詩「ラーマーヤナ」から題材をとった物語と結びつき、現在のような形になったと言われています。猿たちが王子を助けるという物語です。
ご存知かもしれませんが、東南アジアの舞踏や音楽は、祭りや宗教的な儀礼と結びついたものが多いという特徴があります。
ヒンズー教の影響が強いバリ島には、少女たちが踊る「レゴン」や、ユーモラスな獅子の踊りの「バロン」といったような舞踏があります。
色鮮やかな衣装をまとった踊り手は、大げさな身振りと表情で踊りの世界へと観客を魅了します。
踊りに欠かせないのが、音楽です。バリ島にはガムラン音楽と呼ばれる大小の打楽器を組み合わせた合奏状態があります。(別記事でご紹介の通り)
手や木槌で叩きだされるリズムは、舞踏にだけ使われているのではなく、演劇や影絵劇の伴奏としても使われています。
タイの古典舞踊にも、「ラーマーヤナ」を織り込んだものが多いです。きらびやかな衣装と尖塔のある被り物の踊り手がしなやかな手指の動きで舞い踊ります。
東南アジアの舞踏芸術には、<人間、神、自然>の間を舞踏や音楽がつなぐという特徴が見られるのです。
踊り手たちの動きと神秘的な音楽のなかで、一時目に見えないエネルギーの渦のなかに身をおいてみるのもいいものです。